東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻
研究内容 | RESEARCH
月惑星表面の年代学研究
固体天体の様々な地質イベントの年代決定とそれを時系列に並べて相互関係を解明することは、固体天体の進化履歴を理解する過程において、最も基本的な作業の一つです.これまでに画像データを用いた様々な月面地形の年代推定に基づいて、月の進化履歴復元を行ってきました.特に溶岩流の年代決定を重点的に進めており、その成果として、月では15億年前までマグマ噴出が起こっており、火成活動の継続期間が約30 億年に及ぶことを見いだしています.また、年代推定の精度向上のため、年代決定手法の開発・改良研究、精度検証にも注力しています.
天体衝突史の研究
地球-月系における天体衝突史を解明することは、太陽系の軌道進化の履歴を理解する上で重要です.これまでに月面のクレータの記録から、地球月系における衝突頻度の時空間変化と衝突天体の起源推定を進めてきました.具体的な成果として、月の同期回転が月面のクレータ生成頻度に地域差を起こすことを初めて観測により実証し、その地域差の程度から地球-月系における衝突天体は地球近傍小惑星からなり、彗星の寄与は小さかったこと、などを明らかにしました.また最近では、「かぐや」データを用いて太古の巨大衝突盆地の年代推定を進めており、月隕石研究者との共同研究をつうじて後期重爆撃期仮説の検証を試みています.それによって、太陽系初期の軌道進化モデルとして広く知られているモデルの検証を目指しています.
月惑星探査計画の参加
2004 年より「かぐや」プロジェクトに参加し、月面撮像分光機器の電気・環境試験、データ処理システムの設計・開発、観測運用システムの設計・開発、観測計画立案などを担当してきました.また2012年より「はやぶさ2」プロジェクトに参加し、光学航法カメラの運用計画策定、着陸地点選定を主導してきました.将来探査として、月極域探査や火星衛星サンプルリターン計画にも関わっています.