地球と宇宙

研究内容 | RESEARCH

 私たちの研究室では主に、探査機搭載用の粒子観測器の開発を行っています。開発した観測装置を用いて自身の興味のあるターゲットを観測し、そこで取得した世界初のデータを用いて、理解を深めることが大きな目標です。そのため開発における自由度はかなり高く、学生主導で研究を進めることが可能です。研究室のメンバーも、それぞれが様々なフェーズに身を置いて、日夜研究を進めています(新しい装置の原理実証に取り組む人、打ち上げが決定したミッションのタイムラインに沿って装置を開発する人、打ち上げが終わった装置のデータ解析に取り組む人)。

 特に現在、私たちは大きく分けて二つのテーマに取り組んでいます。一つは惑星周りの磁気圏を舞台とした電磁気学についてです。もう一つは太陽系の歴史をはじめとする惑星科学についてです。それぞれについての詳細は、下記をご覧ください。

​惑星磁気圏の研究

 太陽系の宇宙空間は一見何もないように見えますが、実はプラズマと呼ばれる電離した気体状態の粒子で満たされています。このような太陽系内のプラズマに関して数多くの未解明の課題が残されています。例えば、地球近傍には極めて高いエネルギーのプラズマが捕捉された放射線帯と呼ばれる領域が存在しています。この放射線帯は磁気嵐の際に消失・生成することが観測されるなど、太陽活動に伴い非常にダイナミックに変動することが知られています。この消失・生成機構は惑星磁気圏分野における長年の未解明の謎となっています。一方、太陽系の他の惑星は地球とは大きく異なる多様なプラズマ環境を有しています。他の惑星の直接観測例は少なく、プラズマの大気への影響やオーロラ発光プロセスなどの理解はまだ十分ではありません。私たちの研究室ではそれらの謎を解明する糸口となるデータを自らの手で得るため、プラズマをその場観測する探査機・ロケット搭載用機器の設計開発や機器から得られるデータの解析を行っています。

研究テーマ例)

ジオスペース探査衛星「ERG」搭載用中間エネルギー電子分析器の開発

観測ロケット「RockSat-XN」搭載用中間エネルギー電子観測器の開発

惑星探査機搭載用の半球視野を持つ非熱的電子観測器の開発

​固体惑星・小天体探査

 固体惑星や小天体の起源・進化にアプローチする研究において、天体探査の機会を生かしたその場粒子観測は大きな役割を果たしてきました。例えば、ある惑星大気の組成を測定することは、その惑星を形成した材料物質の集積時の混合、脱ガスや散逸による分別過程、惑星表面との反応を含む風化などの過程を議論する上で非常に重要です。私たちの研究室では、その場粒子測定に用いる装置を設計し、実験室実験をベースとして開発を行い、様々な天体探査ミッションに貢献しています。

 現在まさに進行しているミッションの一つは、月極域の探査です。月は、原始地球に火星サイズの天体が衝突し、地球周辺にばらまかれた物質が材料になって形成した(ジャイアントインパクト仮説)と考えられています。ただし、この過程で超高温・全溶融を経験したはずの月は、様々な観測データをもとに判断すると、水のような高揮発性の物質を地中に保持しているようにも見えるのです。現在我が国では、月極域にローバーを送りこんで土壌サンプルを精査することを計画しており、私たちの研究室ではそのローバーに搭載することを目的とした「わずかな水を嗅ぎ分ける」ための中性粒子質量分析器の開発に従事しています。

 他にも、私たちはComet interceptorと呼ばれる彗星探査ミッションにも携わっています。地球型惑星に揮発性物質を運び込んだ候補天体の一つである彗星は、その平均的な組成や個体差について統一的な理解が得られておらず、さらには彗星自体の進化についても激しい論争があります。始原的な彗星をターゲットとしたこのミッションでは、彗星が太陽に炙られてどのように進化するのか、太陽系初期には彗星を介してどのような揮発性物質が内縁部に運び込まれたのか、などを議論する上で重要な観測が行われる予定です。私たちの研究室では現在、彗星の尾に含まれる成分を分析するためのイオン質量分析器を設計しています。

 一方で、全く新しい高性能な装置開発をもとにした、ボトムアップ的な研究も進行しています。これは、装置を応用する具体的なミッション等は決まっていないものの、過去に類を見ないほどの高分解能な装置を新たに開発し将来の惑星科学の実証的研究をリードしようとする野心的なものです。研究室のメンバーの心意気次第で、我が国の将来のミッションが決定することは十分にあり得るのです。

研究テーマ例)

太陽系探査を目指した小型イオントラップフーリエ変換型質量分析器の開発

月極域探査ミッション搭載用の質量分析器のための高感度イオン源の開発

彗星探査ミッションComet Interceptor搭載に向けたイオン質量分析器の開発

rigakubu_edited.png